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労災保険料率の引き下げ

労災保険料1300億円下げ、企業の子育て負担増を軽減。

厚生労働省は2018年度から労災保険料率を引き下げ、企業の負担額を現在より年約1300億円減らす方針を固めた。雇用保険料率の引き下げ分と合わせると、労働保険による企業の負担額は年3千億円規模で軽くなる。政府は企業側に子育て支援に充てる3千億円の追加負担を求めたが、今回の措置で負担感を和らげる。

労災保険料は全額が事業者負担で、3年に1回料率を改定する。現在の保険料率(全業種平均)は0・47%。前回改定では0・01ポイント下げ、年約280億円の負担軽減になった。労働事故が減り、保険財政も安定しており、今回は約1300億円を捻出する。12月中旬の労働政策審議会(厚労相の諮問機関)に示す。

厚労省は今年度から3年間、労使折半で負担する雇用保険料の料率を0・8%から0・6%に引き下げる。企業側の負担はすでに年約1700億円を軽減している。政府が経済界に求める保育所整備などの負担は3千億円だが、労災保険料の下げで企業側に配慮する。

経団連の榊原定征会長は11月30日、政府の「人生100年時代構想会議」で子育て支援のための企業負担に同意した。安倍晋三首相はこの際、企業側の負担を和らげるため労働保険料率の引き下げを検討すると表明。人づくり革命に必要な財源は年2兆円としている。

人づくり革命の政策パッケージは幼児教育の無償化が柱だ。認可保育所は3~5歳は所得に関係なく一律で無償に、0~2歳は住民税非課税の低所得世帯に限り無償にする。対象には通常の保育所に加え、ベビーホテルや一時預かりなどがある。こうしたサービスをどこまで無償化するかについては、実態を調べて来年決める。

日本経済新聞

健康保険証の番号

健康保険証の番号、一人ひとつ割り当て、転職時、情報を継続管理。

厚生労働省は、健康保険証の番号を国民一人ひとりに割り当て、健康診断の情報を本人が継続して把握・管理できるシステムをつくる。新しい番号の保険証は2019年度から順次発行する予定だ。従業員の家族も新しい番号をもらえるようになる。継続して自分の診断情報をつかめるようにすることで健康への意識の向上を促し、医療費の抑制につなげる。

健康保険証の被保険者番号は基本的に世帯単位で割り振られている。加入する保険の運営者がそれぞれ番号を付けており、転職などによって加入する保険が変わると個人情報は引き継がれない仕組み。健康診断の情報も加入する保険ごとに途絶えがちなのが実情だ。

厚労省は19年度から新しい番号を記載した保険証を順次発行し、20年夏ごろからの本格運用を目指している。番号にひも付けされた健康診断の結果や病院の受診履歴を本人がインターネット上で閲覧できるようにする。

情報は診療報酬の事務を担う「社会保険診療報酬支払基金」などが一元的に管理する。将来は医療機関が患者の診療・服薬情報を共有できるようにするなど、情報の多重活用も想定している。

日本経済新聞

副業

副業しやすく、ルール修正、厚労省、本業との労働時間合算など検討、「働き方」整合性も課題。

複数の職場で働く人をめぐる就労管理のルールが変わる可能性が出てきた。厚生労働省は複数の勤務先での労働時間を合算する仕組みの見直しを考える。組織をまたぐ就労管理は実態に合わないだけでなく、従業員の副業を阻む要因になっているためだ。厚労省は心身に悪影響を及ぼす長時間労働を避けることにも配慮しながら、慎重に見直しを探っていく。

厚労省は労働関係法制に詳しい学者らでつくる会議で2018年に検討を始める予定。労働基準法を改める可能性を考えながら、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の場で労使を交えて議論をする。早ければ20年の国会に法案を出し、21年に仕組みを変える。

いまの労基法は労働時間の管理について、労働者がいくつかの企業で働く場合にはすべて合計するのが前提だ。ある人がいくつかの企業で1日8時間といった法定時間を超えて働くと、法律の上では残業代がもらえることになっている。

例えば昼間に「本業」のA社で8時間、夕方以降に「副業」のB社で2時間働いている場合、法律の原則ではB社が残業代を支給する。わずか2時間しか働いていないB社が残業代を支給する義務を負い、B社のコストがかさんでしまう。こうしたルールの存在が日本で副業が広がらない一因とされている。

実際には「本業」と「副業」の企業がそれぞれの労働時間を互いに把握するのは難しい。そのため「ルールが有効に機能していない」(労働法に詳しい小西康之・明治大教授)という面もある。産業医の面談など従業員の健康管理にまつわる義務を、どちらの企業が果たすのかもあいまいになっている。

厚労省はこうした実態を踏まえルールの見直しが必要だと見ている。海外には労働者が自らを労働時間規制の対象外とすることを選べる制度などがある。同省は海外の事例も参考にしながら、いまの規定をどう改めるか議論していく。

長時間労働を無くそうと政府が旗を振る「働き方改革」とどう整合させるかも課題になる。政府は早ければ19年度にも残業時間に年720時間といった上限規制をつくる。仮に勤務先ごとに完全に別々の就労管理になれば、ある労働者がいくつかの職場をまたいで異常な長時間労働を続けても、外部から見つけにくくなってしまう。

離職せず別の仕事に挑める「副業」はキャリアや技能の向上につながる利点がある。半面、「本業」がおろそかになるなどの懸念が経営側に強い。

中小企業庁の14年度の調査では企業の85・3%が副業を認めていない。政府は人々が副業にも取り組みやすい環境づくりを目指している。

日本経済新聞

未払い残業代を支給

電通「残業代」23億円支給へ…社員自己申告で

違法残業事件で有罪判決が確定した大手広告会社・電通(東京)が、事実上の未払い残業代として計約23億円を社員に支給することが、同社への取材でわかった。

社員の自己申告に基づいて勤務時間を改めて精査した結果で、一時金として支払うという。

同社によると、2015年4月から今年3月の間で、業務の性格が強いにもかかわらず、労働時間として申告しなかったものがあれば、自己申告するよう社員に指示した。その結果、業務と認められるケースが多数判明。17年1~9月期連結決算で「勤務時間に関する一時金」として23億6700万円を計上した。来月中に該当者に支払う方向で、調整しているという。

同社は昨年末の記者会見で、入力された社員の終業時間と、実際の退館時間に1時間以上の乖離(かいり)があったケースが、15年は月平均約8200件に上り、労働時間の「過少申告」が横行していたと説明。自己啓発や情報収集名目で、職場に残る社員が多数いたとしていた。

読売新聞

基礎控除、年金控除、給与所得控除の改正

  • 2017-11-26 (日)
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所得税、手探りの改革、3控除一体見直し、政府・与党、あす議論本格化。

政府・与党は27日から2018年度税制改正の本格的な議論に入る。焦点の所得税は、家族構成の変化や多様な働き方に即した税制に改めるのが課題だ。会社員向けの給与所得控除、年金受給者にかかる公的年金等控除、全ての納税者に適用される基礎控除を一体で見直す方向。ただ高所得者の反発も予想され、世論の理解を得られるか手探りの始動となる。

働き方の変化にらむ
所得税改革は、家族構成や働き方など社会の変化にどう対応するかを課題としている。17年度税制改正では働く女性の増加を踏まえ、専業主婦を優遇する配偶者控除を見直した。

自民党税制調査会の宮沢洋一会長は「20年度改正を視野に入れる」と述べ、3年程度の時間をかけて中身を詰め、実現時期を探る考えを示した。

初動となる18年度は基礎控除、年金控除、給与所得控除を一体で再点検するのがポイント。特定の働き方や収入に即して控除するのでなく、どんな働き方でも公平に差し引く仕組みとするのが狙いだ。

基礎控除は減税
基礎控除の見直しは減税策だ。現在は一律38万円だが、与党は50万円程度に引き上げる案を軸に検討する。引き上げによる税負担減の恩恵は幅広い層に及ぶが、問題は公平性。現在の課税方式では高所得者ほど税負担の軽減額が大きくなる。年収2500万円を超えるような高所得者の場合は、段階的に基礎控除をゼロにする案も検討する。

基礎控除は全ての人が対象。仕組みを簡素にしながら、特定の働き方によらずに全ての人に恩恵が行き渡る。基礎控除で減税する一方、会社員や年金受給者など対象を特定した控除は縮小する。

給与控除を縮小
給与所得控除は、多様な働き方を踏まえた見直しを進める。フリーランスや独立起業する若年層が増えているのに、同控除では優遇の対象外。今後の検討で基礎控除を引き上げた場合、増額分を一律引き下げる方向だ。そのうえで、現在は収入1000万円で220万円の控除上限を、800万~900万円台で188万円程度に下げる案が浮上している。

高所得者は負担増になるが、子育て世帯の負担増は避ける。増税分の還付や、扶養控除(16~18歳)などへの上乗せ、年少扶養控除(16歳未満)の復活などの案もあるが、対象をどの年齢に絞るかも含め制度設計を急ぐ。給与所得控除を見直せば、高所得の会社員は増税になる。これまでも増税が相次いだ層だけに強い反発も予想される。

年金控除に上限
厚生年金や企業年金など年金収入に応じて一定額を差し引く年金控除も、基礎控除の引き上げ分と同額だけ一律に引き下げる。年金収入1千万円超を目安に上限を設ける。年金以外の収入が多い場合は、年金控除額を減らす案も議論する。

給与所得控除と年金控除の両方を受けている人の扱いも課題。基礎控除を引き上げた場合、それぞれの控除から引き上げた分を引くので、二重に増税されることになる。この場合は、どちらか一方の減額にとどめる。

ただ高所得の高齢者の税負担増は、高齢者の勤労意欲をそぐ恐れがある。22日の自民党税調の会合では「高所得者の増税は稼ぐ行為を抑制してしまう」との意見が出た。働く高齢者は今後も増える。社会保障制度改革とあわせた議論が必要だ。

所得税改革は個人の実入りに直結するだけに、特定の層から異論が出やすい。宮沢氏も「所得税改革は難しい。相当慎重に議論をしないといけない」と話す。
高所得者に負担増、働く意欲しぼむ懸念も。

最近では高所得者の負担は増える傾向にある。税制では給与所得控除の上限縮小や高所得者の配偶者控除撤廃などを進めているからだ。

現行制度をもとにした大和総研の試算によると、年収1500万円の片働き4人世帯の実質可処分所得は2017年からの3年で約28万円減る。11~20年の変化をみてもこの年収層の所得減は大きい。税の負担増の直撃を受けている形だ。

これまで過度な優遇が続いたとの見方もあるが、高所得者の狙い撃ちが続けば、働く意欲を失わせ、経済の活力維持にも影響が出る。人手不足が深刻になる中、働く高齢者の勤労意欲も阻害しないほうがよい。

大和総研の是枝俊吾氏は「子どもや配偶者がいるかどうかで負担感も変わる。同じ所得水準の人たちの間で公平な税制とすべきだ」と指摘する。

18年度改正で見直しを決めると、実際に個人の負担が変わるのは19年1月以降となる。ちょうど参院選や消費税率10%引き上げの直前だ。今年10月の衆院選で自民党は圧勝したが、議論をやすやす進められるわけではない。

財務省幹部は「複数の控除を同時に改正するのは戦後初めてでは」と話す。それだけハードルは高く、財務省も今回の控除見直しにより、負担増と負担減が同額になる税収中立をめざす考えだ。増税になる人は実際には数%とみられる。

日本経済新聞

金融機関の人事評価

銀行、脱「ノルマ偏重」、三井住友など、評価見直し、働き方や生産性を重視。

金融機関が成果重視型の人事評価を見直し始めている。これまでは営業ノルマの達成度に軸足を置いていたが、業務効率化など働き方改革や生産性向上への取り組みを重んじる。銀行は金融とIT(情報技術)を融合したフィンテックの浸透で店舗中心の営業手法の修正を迫られ、リストラに取り組んでいる最中。時代にあわせた多様な人材の確保を急ぐ。

働く時間を減らせば評価します――。三井住友銀行は今年度から、働き方改革の取り組みを個人の評価項目に加えている。従業員一人ひとりに行動計画を作らせ、不要な業務の削減や労働時間を減らすための取り組みを明記してもらう。上司が期末に達成度を3段階で評価し、賞与や基本給に反映する。

人海戦術限界に
銀行といえば、ノルマ営業。貸し出しや投資信託の販売など成果や業績がほぼ評価のすべてだった。しかし、人口減に伴う国内市場の先細りで、人海戦術で収益をあげるビジネスモデルは限界に近づいている。一般企業と同じく、働く人のやる気を引き出しながら、どう収益力の向上につなげるかを課題とする。

みずほフィナンシャルグループも今年度から、目標管理の中に業務効率化への取り組みを入れるよう義務付けた。会議のペーパーレス化や話し合う時間の短縮などだ。オリックスも今年度、短時間で成果を上げた人を高めに評価する仕組みを導入した。効率よい働きを求める。

若手には目先のノルマだけでなく、銀行員として成長する姿勢も求める。みずほ銀行は今年度、営業に使うスキルを伸ばした人を評価する仕組みを取り入れた。英語でのプレゼンテーションなど、業務遂行能力を高めた若手を評価する。

りそなグループも顧客満足度を支店評価の優先項目に位置づけた。

業務効率化急ぐ
日本の金融機関の生産性は低い。日銀によると、日本の大規模金融機関の経費率は70%程度。海外と比べ5ポイントほど高い。職員1人当たりの業務粗利益も欧州勢などに劣る。国内の業務効率化は収益に直結する。三菱UFJフィナンシャル・グループはデジタル化で2023年度までに業務量を3割減らす目標を立てた。個人の実績評価でも「生産性」を取り入れている。

他の業界でも、各社は人事評価の仕組みを変え、生産性向上につなげようと競う。大和ハウス工業は3年前、支店単位で決める賞与の算定基準を「社員1人当たり利益」から「社員が働いた1時間当たりの利益」に切り替えた。残業時間は2割以上減ったという。

日本経済新聞

正社員不足

正社員不足、過去最高の49.1%に上昇

正社員・非正社員の「不足」割合~時系列~

有効求人倍率の上昇や失業率の低下など労働市場が逼迫するなかで、求職者側では明るい材料となっている。一方で、企業にとって人手不足の状態が続くことで人件費上昇などコスト負担の高まりに直面し、今後の景気回復に足かせともなりかねない。こうしたなか、人口減少と産業構造の変化で、働き手の奪い合いが生じており、アベノミクスの成長戦略を進めていくなかで、人手不足が大きな懸念材料ともなっている。

そこで、帝国データバンクは人手不足に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2017年10月調査とともに行った。

※調査期間は2017年10月18日~31日、調査対象は全国2万3,235社で、有効回答企業数は1万214社(回答率44.0%)

調査結果

1.正社員が不足している企業は49.1%と5割近くに達した。3カ月前(2017年7月)から3.7ポイント増、1年前(2016年10月)から7.3ポイント増加した。正社員の人手不足は、2006年5月の調査開始以降で過去最高を更新した。業種別では「情報サービス」が70.9%と7割を超え、トップとなった。以下、「メンテナンス・警備・検査」や「運輸・倉庫」「建設」など6業種が6割台となった。不足企業が60%以上の業種は3カ月前より増加し、企業の人手不足感は一段と深刻度を増している。規模別では、大企業ほど不足感が高く、大企業の積極的な採用活動が中小企業の人材確保に大きな影響を与える要因になっている

2.非正社員では企業の31.9%が不足していると感じている(3カ月前比2.5ポイント増、1年前比4.7ポイント増)。業種別では「飲食店」「飲食料品小売」「人材派遣・紹介」「メンテナンス・警備・検査」などで高い。上位10業種中5業種が小売や個人向けサービスとなっており、消費者と接する機会の多い業種で不足感が高い。正社員と同様に、規模の大きい企業ほど不足感が強くなっているなか、「中小企業」の不足感も一段の高まりを見せている

「情報サービス」は7割超の企業で正社員不足

「TDB景気動向調査」(帝国データバンク)によると、10月の国内景気は、世界経済の回復が続くなか機械や電子部品の輸出が好調だったほか、旺盛な建設投資も加わったことで製造業の景況感は過去最高を更新した。さらに、訪日外国人客の消費拡大や株式市場の活況もあり、国内景気は回復が続いた。

今回の調査では、企業の49.1%が正社員の不足感を抱いている結果となった。とりわけ「情報サービス」では7割超の企業で正社員が足りておらず、さらに「メンテナンス・警備・検査」や「運輸・倉庫」「建設」など6業種でも6割以上に達した。人手不足を感じる企業は一段と広がっている状況が浮き彫りとなった。

また、非正社員では、「飲食店」の8割超が人手不足を感じていた。さらに、「飲食料品小売」が6割を超えたほか、「人材派遣・紹介」や「メンテナンス・警備・検査」、百貨店やスーパー、コンビニなどを含む「各種商品小売」など5業種で5割を超えている。特に、上位10業種中5業種が小売・個人向けサービスとなっており、消費者と接する機会の多い業種で不足感が高い。

とりわけ、「メンテナンス・警備・検査」と「運輸・倉庫」の2業種は正社員と非正社員の両方で上位にあがっており、雇用形態にかかわらず人手不足が深刻化している様子がうかがえる。

大企業の56.4%が正社員の人手不足を感じているなかで、大企業の積極的な採用活動が中小企業の人材の確保・維持に大きな影響を与える要因となっている。こうしたあおりを受けて、正社員の不足感は小規模企業においても4割以上が不足と感じており、人手不足が従業員数の少ない企業でも深刻化している実態が明らかとなった。

人手不足倒産が増加傾向を示すなか、企業の人手不足は深刻度を増している。景気の回復とともにひっ迫する労働市場において、とりわけ中小企業は賃金上昇による企業収益と人材確保のバランスが一段と大きな経営課題となっている。働き方改革を進めるなかで、経済の好循環を強化することで、中小企業の収益改善へとつながる政策が重要性を増しているといえよう。

帝国データバンク

iPhoneXと違法な時間外労働

  • 2017-11-24 (金)
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「iPhoneX」過重労働、中国工場、鴻海認める、調査を開始、実習生「10月から悪化」、顔認証で生産停滞後に負荷か。

米アップルの最新型スマートフォン(スマホ)「iPhoneX(テン)」。その中国の工場で、学生が社内規則で定めた上限時間を超えて働くなどの過重労働を余儀なくされていた事実が明るみに出た。生産を手掛ける台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は問題を認め調査に乗りだした。「世界の工場」といわれる中国だが、ここ数年は人手不足の問題が顕在化。進出企業は労務管理の責任が厳しく問われている。

「時間外労働は10月に入ってからますます悪化した」。中国中部の河南省、鄭州。世界のiPhoneの約半分を出荷するといわれる鴻海の中国子会社、富士康科技集団(フォックスコン)の巨大工場で従事する学生は記者に明かした。

こうした学生は「実習生」として専門学校などから数千人が駆り出されているという。就業規則では実習生は1週間の労働時間が40時間を超えてはならないと定められている。強制はなかったが土日も働く状況が常態化していたとささやく。

「X」は顔認証で画面ロックを解除する機能を新たに採用したが、部品の良品率が十分に高まらず量産が滞った。鴻海は遅れを取り戻そうと9月後半から一気に生産速度を上げたとされ、結果的に現場に過剰な負荷がかかり管理が行き届かなくなった可能性がある。

別の学生は「インターンを終わらせないと学校を卒業できない」と話した。鴻海の工場での実習が学校のカリキュラムに組み込まれている。鴻海によると、こうした実習制度は「学生に就業の経験を与え、その後の就職を容易にするものだ」とは説明するが「必須の就労経験」は事実上の強制とも言える。

英フィナンシャル・タイムズ(FT)は21日に同工場で違法な時間外勤務が行われていたと報道した。中国の労働規制でも基本的に労働時間は1日8時間、1週間で40時間を超えてはならないと定める。6人の高校生は日常的に11時間労働をしていると証言しており、FTは違法な時間外労働にあたると指摘した。

鴻海は21日に「週40時間を上限とする社内規則が一部の工場で守られていなかった」と発表し、管理の不備を事実上認めた。既に実態調査と問題の是正を進めており「すべての工場への監督を強め、規則を厳格に順守させる」とした。

実は鴻海による学生の強制労働が明らかになったのは初めてではない。2013年に山東省煙台市のゲーム機を製造する工場で学生に違法労働させていたことが発覚。今年も遼寧省瀋陽市の大学が7月から3カ月間、600人の学生を煙台工場に派遣して実習させたことが問題となった。

ただ、鴻海の強みは中国の政府と一体となった低コストの仕組みだ。米アップルの製品を組み立てると、輸出が増えて税収が増えるため、多くの地方政府は積極的に誘致。鴻海に敷地や建屋だけでなく、従業員の宿舎や通勤用バスも事実上の無償で提供し、従業員の確保も約束する。このため、政府が学生を派遣する仕組みが定着しているのだ。学生なら賃金を安く抑えられる会社側の意図も透けて見える。

中国での低コスト生産で成長した台湾の電子機器の受託製造サービス(EMS)は人件費の上昇で目下、厳しい状況に置かれている。鴻海は「X」の生産遅れと人件費の高騰が響き、17年7~9月期に56%の営業減益となった。同業大手の和碩聯合科技(ペガトロン)や仁宝電脳工業(コンパル)も売上高こそ伸びているが、コスト上昇を補えず大幅な営業減益に陥っている。企業は労働力確保の仕組みの透明性や公正性にも目を配る必要性が高まっている。

〓〓 台湾EMS大手4社の〓17年7~9月期連結業績 〓〓
社 名 売上高 営業〓利益
鴻海精密工業 10,788(微増) 187〓(▲56)
和碩聯合科技(ペガトロン) 3,368(7) 43〓(▲44)
広達電脳(クアンタ) 2,761(23) 48〓(▲19)
仁宝電脳工業(コンパル) 2,316(17) 29〓(▲16)
(注)単位億台湾ドル、カッコ内は前年同期比増減率%、▲は減少
「iPhoneX」過重労働、中国工場、鴻海認める―中国、労働力が減少、高学歴化で。

今回の問題の裏には「世界の工場」といわれた中国の労働力が減少している現実がある。特に若者は農村部も含め大学などに進む高学歴傾向が進んでいるため、鴻海精密工業を含めた中国の製造拠点は労働力の確保に苦労しているのが実態だ。

「最近の5年間で労働力は2000万人近く減少した」。中国人民大学中国就業研究所の曽湘泉所長は指摘する。15~59歳の労働力人口は2011年のピーク時に9億2500万人いたが、毎年200万から500万人近くの規模で減少したため、現在は9億人強。さらに50年には7億人前後まで落ち込むという。

特に15~24歳の青年層が高学歴志向などで減っており、06年の1億2000万人から20年には半分の6000万人まで減少する見通しだ。生活レベルが向上したため身体的につらい作業をさける傾向があり、離職率は30%台後半で推移する。

この結果、賃金は10%前後で上昇するなど人件費の増加にもつながる。鴻海の鄭州工場では工場の従業員が新たな労働者を紹介した時には1000元(約1万7000円)の報奨金を支払うほか、紹介なしで新たに働く労働者には600元を支払うという。

日本経済新聞

パート時給

パート時給上げ、思わぬ人手不足、「年収の壁」自ら働く時間減、流通や外食、営業時間の短縮も。

パート社員の時給増が流通や外食業界の人手不足に拍車をかけている。税や社会保険料の負担で優遇される目安の103万円や106万円といった「年収の壁」に届きやすくなり、働く時間を減らす人が増えているためだ。働き方改革で正社員の残業による穴埋めも難しくなり、営業時間見直しを迫られる店も出てきた。

「この2年で時給が100円くらい上がった。以前は月に17、18日働けたが今は14日くらい」。横浜市のスーパーで働く女性(55)は話す。時給は980円。同じ店で12年働くベテランだが夕方や夜間など人手が足りない時間のシフトに入れない。時給が上乗せされれば社会保険料で自己負担が生じる年収106万円を超えてしまうためだ。

1年の前半に働き過ぎ年末にかけて週4日の勤務を3日にした同僚もいる。職場は人材派遣を利用しながら何とか業務を回している。

厚生労働省の統計によると、卸売・小売業で働くパート社員の時給は2017年1月から1000円前後で推移する。2年前から4%ほど高い。一方、17年平均の月間労働時間は92時間で2年前から3%減っている。

時給が1000円の場合、週4回、1回5時間程度の勤務で、世帯主の配偶者控除(特別控除)が減り所得税の負担が重くなる年収103万円を超える。「年末にボーナスを出すと、辞退する人さえいる」(大手スーパー)

時給を上げない待遇改善で、労働時間を確保する動きも出始めた。オリックスはパート社員向け退職金制度の導入を企業に働きかける。

同社の「選択制確定給付企業年金」はパート従業員が報酬の一部を任意に積み立て、退職時に企業の負担分を加算した金額を受け取る仕組み。月々の収入を減らして年間の労働時間を増やせる。

ドトールコーヒーが9月に導入し、ビアホール運営のキリンシティ(東京・中野)も近く取り入れる。オリックスの三宅規文課長は「問い合わせが多い」と話す。

パート社員による勤務調整は以前からあった。ただ今年は時給増に加え、多くの企業が働き方改革に取り組んでおり「正社員のサービス残業で店を回しにくくなった」(中堅スーパー)。企業は高コストを覚悟して高い賃金でパートや派遣労働者の数を増やすか営業時間を見直すかという選択を迫られている。

阪神地域で7店を持つ地場スーパーのアカシヤ(大阪市)は原則毎日だった営業日を見直し今年8月末、日曜を全店定休日にした。店舗の求人サイトでは「日曜休みで主婦さんも働きやすい」などとうたう。

配偶者控除が減額する基準は2018年、103万円から150万円に引き上げられる。ただ配偶者がいる社員に「配偶者手当」や「家族手当」を支給する企業では、条件を配偶者控除に合わせて103万円以下としていることが多い。社会保険料の自己負担基準となる106万円や130万円の「壁」を意識するパート社員も少なくない。時給増がパート社員の勤務時間を抑制する状況はすぐには解消しなさそうだ。

日本経済新聞

認可保育所の無償化

3~5歳の認可保育所、所得制限なく無償化、政府方針。

政府は21日、人づくり関連政策の柱である3~5歳の認可保育所の無償化について、所得に関係なく一律で実施する方針を固めた。一律無償化には「高所得者に恩恵が偏る」として、高所得者に一定の自己負担を求める声があった。しかし、安倍晋三首相が先の衆院選で「すべての3歳から5歳の幼稚園・保育園を全面無償化する」と訴えており、整合性がとれないと判断した。

政府が12月上旬にまとめる教育無償化などを柱とした「人づくり革命」に関する政策パッケージに盛り込む。5歳は先行して2019年度に無償化し、20年度は3~4歳に対象を広げる。政府は3~5歳の保育園と幼稚園の無償化に8千億円を見込んでいたが、認可保育所の一律無償化で膨らむ可能性がある。

認可保育所の保育料は一般的に認可外より割安だが、所得に比例して増える仕組みだ。実際の負担額は住んでいる自治体によって異なるが、高所得世帯の保育料は最大で月10万円程度になることがある。自民党はこうした世帯を含めて一律で無償化すれば恩恵が高所得者に偏ると見て、高い保育料を払う高所得者には一定の自己負担を求める提言案をまとめていた。政策を検討してきた内閣官房でも高所得者には保育料の補てん額に上限を設ける案を検討してきた。

一方、首相官邸内では高所得者に限るとはいえ、認可保育所に通う3~5歳児の親の負担を残せば無償化とは言えず、首相が訴えた公約に反するとの懸念が出ていた。20日の衆院代表質問でも、立憲民主党の枝野幸男代表が幼児教育の無償化について「大切なのは全ての子どもが等しく対象であることだ。親の年収や施設の種類で限定や差異を付けるべきでない」と追及していた。

0~2歳の認可保育所の保育料は、年収約260万円未満の住民税非課税の世帯に限って無償化する。

認可保育所が満員で子どもを預けられず、やむをえず保育料の高い認可外保育所に預けている世帯も多い。認可外保育所向けの負担の軽減措置も別に検討している。

政府は高等教育の無償化も進める。年収約260万円未満の住民税非課税世帯の学生の学費を免除し、返済する必要がない給付型奨学金を拡大する。アルバイトに時間を取られずに勉学に集中できる環境を整える。

政府は消費税収と企業拠出金でまかなう財源2兆円の枠内で幼児教育や大学の無償化を進める。認可保育所を完全無償化して財源が増えた分、高等教育の無償化など他の施策にしわ寄せが来る可能性が高い。無償化政策の恩恵が負担能力がある高所得世帯に偏るのは明らかで、国の財政が厳しいなかで財源の使い道の妥当性への批判が出ることは必至だ。

政府が12月上旬にまとめる政策パッケージには、公明党が公約に掲げた私立高校の無償化も盛り込む。公明は年収590万円未満の世帯を対象に実質無償化を求めており、財源をどのように手当てするかを含めて調整が続いている。

【表】認可保育所の保育料は所得に応じて高くなる
〓〓 国が定める上限額、3歳以上 〓〓
年 収 保育料(月)
生活保護世帯 0円
~ 260万円 6000円
~ 330万円 1万6500円
~ 470万円 2万7000円
~ 640万円 4万1500円
~ 930万円 5万8000円
~1130万円 7万7000円
1130万円~ 10万1000円
(注)実際の利用者負担額は自治体によって異なる

日本経済新聞

 

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