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「同一労働同一賃金」のガイドライン

  • 2017-01-04 (水)
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非正規、格差是正促す、政府「同一賃金」へ指針、基本給、能力・成果を反映。

政府は20日、首相官邸で働き方改革実現会議を開き、非正規社員の処遇改善を促す「同一労働同一賃金」のガイドライン(指針)案を示した。正社員と非正規との不合理な待遇差を例示し、基本給や賞与、手当などについて格差是正を促した。指針には、格差をつけた企業に理由を説明する責任を課す仕組みは盛り込まれず、実効性の確保が課題になる。

 基本給や手当など待遇全般について格差が認められるかどうかを具体的に記した指針を政府が作るのは初めて。安倍晋三首相は会議で「多様な働き方の選択を広げる。何とかして同一労働同一賃金を導入したい」と強調。指針を踏まえた関連法の改正を指示した。

 厚生労働省の労働政策審議会の議論を踏まえ来秋の臨時国会への関連法案の提出をめざす。政府は法改正が実現した段階で指針案の「案」を取るとしている。

 国内の労働市場に占める非正規の割合は約4割にのぼる。政府は賃金水準の引き上げや手当の充実により、非正規の働く意欲を高め、生産性向上につなげたい考えだ。

 指針はA4で16ページ。非正規のうち有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者を対象に正社員との格差是正を企業に求めた。待遇は基本給、賞与・手当、福利厚生、教育訓練・安全管理の4項目に分類。合理的な差、非合理な差について具体的な事例をあげて説明した。

 賃金の大きな比重を占める基本給は(1)職業経験や能力(2)業績・成果(3)勤続年数――の3要素の基準を設定。それぞれの要素で働き方を評価し、雇用形態にとらわれない基本給を払うよう促した。正社員と非正規で評価が同じであれば同水準の支給を原則としながら、違いがある場合はその違いに応じた支給を求めた。

 非正規への賞与の支給にも踏み込んだ。厚労省の調査によると、非正規向けの賞与制度を持つ企業は全体の4割弱。同じ仕事でも正社員にしか賞与が払われない場合が多い。指針では業績への貢献が同じであれば同額を支給し、貢献度合いに違いがあればそれに応じた額を支給するとした。

 曖昧だった役職手当や時間外労働に対する手当も同一支給の対象とした。深夜や休日の仕事は雇用形態にかかわらず同じ割増率で賃金を払うよう要請。通勤費を支払うよう促し、職業訓練の機会も与えるよう求めた。

 政府が実効性を担保するため改正を想定しているのは労働契約法、パートタイム労働
法、労働者派遣法の3法。企業による待遇差の説明義務に踏み込むかが焦点になる。

 ▼同一労働同一賃金 性別や年齢、雇用形態の違いにかかわらず、同じ仕事には同じ賃金を払うという考え方。日本では非正規の賃金は正社員の6割程度に抑えられており、政府は欧州並みの8割程度への引き上げを目標にしている

 政府は20日、安倍晋三首相が働き方改革の目玉と位置づける「同一労働同一賃金」のガイドライン(指針)案をまとめた。同じ内容の仕事をしていれば、正社員であろうと非正規社員であろうと待遇が同じになるようにするのが狙いだ。しかし、どこまで実効性があるかはおぼつかない。改革は緒に就いたばかりだ。

なぜ今 働き方改革か

 政府が同一労働同一賃金の実現をめざす背景には、正社員に比べて少ない非正規社員の給料を増やして個人消費の拡大につなげる狙いがある。停滞感が漂うアベノミクスを再び浮揚させる起爆剤にしたい考えだ。

 日本ではパートタイム労働者の時間あたり賃金がフルタイム労働者の6割弱にとどまる。同一労働同一賃金の仕組みが定着するドイツの8割やフランスの9割と比べて見劣りするのが実態だ。

 賞与も加味すると賃金差はさらに広がり、特に企業規模が大きくなるほど格差は深刻だ。政府は同一労働同一賃金の実現をテコにして、欧州並みまで格差を縮める未来図を描く。

 少子高齢化がすすむ日本では働き手が足りなくなっている。

 政府は雇用者全体の4割を占めるパート労働者や契約社員、派遣社員といった非正規職員の待遇が良くなれば、今まで働いていなかった女性や高齢者が仕事につきやすくなり、働き手が増えると期待している。

 もっとも、企業と働き手の生産性が高まらなければ、企業の稼ぎは増えず、非正規職員の給料を上げるための原資は得られない。同一労働同一賃金とともに、時間でなく成果で賃金を払う脱時間給の導入などを一体で実現する必要があるが、関連法案は国会で棚ざらしになったままだ。

実現へ 道筋どう描く

 同一労働同一賃金は非正規労働者の処遇改善にどの程度の効果があるのか。賃金の多くを占める基本給の格差を縮める効果は、今のところ限定的になるとの見方が多い。

指針は基本給を「職業経験や能力」「業績・成果」「勤続年数」の3つの要素に分類した。例えば入社以降の経験や能力が同じであれば、非正規の職員という理由だけで待遇を正社員より低くしないように求めている。

 ただ、指針は経験や能力などが同じかどうかの基準を示しておらず、企業が自ら判断することになる。対応はばらつきが予想され、いまの仕組みを変更しない判断をする企業も多いとみられる。

 一定の効果が見込めそうなのは賞与だ。業績への貢献度合いに応じた支給を求めており、経済界では「少なくてもいいから賞与は払ってくれというメッセージ」と受け止める声が出ている。

 非正規労働者を対象とする賞与の制度を持つ会社は全体の4割弱にとどまる。「全く払っていなかった企業が支給するようになれば、それは大きな成果」(厚生労働省幹部)という見方が政府内でも多い。

 ただ、非正規の給料を増やすために正社員の賃金を削るようなことになれば、かえって正社員の働く意欲が低下して改革の趣旨に逆行する。非正規の賃上げは、企業の稼ぐ力を高めるための構造改革が前提となる。

 指針は現時点で法的な拘束力を持たず、企業の自主的な取り組みを促すにとどまる。今後の法改正でどのくらい実効性を確保できるかが大きな焦点となる。

企業 対応なお手探り

 「同じ仕事なら採用形態の違いで賃金や処遇が異なるのを直していく」。NTT東日本の山村雅之社長はこう語り、政府の取り組みを評価する。

 非正規社員のモチベーション引き上げは産業界全体の重要な経営課題だ。イトーヨーカ堂は週20時間以上勤務といった一定基準を満たすパート従業員には、正社員と同じ年2回の賞与をすでに支給している。通勤手当や教育訓練、厚生施設の利用なども、正規、非正規で格差はない。

 ただ企業にとっては、同一労働同一賃金の導入によって「人件費負担が増す」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土志田るり子研究員)懸念がある。慎重姿勢を崩さない企業は多い。

 検討企業が増えるとみられる賞与についても、ある大手外食チェーン幹部は「生産性向上などで原資を増やさなければ、賞与を出す一方で基本給を削るようなことになりかねない」と指摘する。

 日本経済新聞社が12月にまとめた「社長100人アンケート」で働き方改革で取り組んでいる施策を聞いたところ、同一労働同一賃金は8・3%にとどまった。政府の指針が明確に固まっていなかった時期での調査ではあるが、「長時間労働是正」や「育児介護支援」と答えた経営者が9割を超えたのとは対照的だ。

 最近では非正規社員が正社員との賃金格差是正を求めて、勤め先を訴えるケースが相次いでいる。通勤手当や食事手当などについて、正社員と同一の支給を命じる判決も出ている。

 今回の政府の指針に法的な拘束力はない。ただ今後、指針を手掛かりにこうした訴訟が増えれば、労働のルールに関する判例が蓄積されて大きな流れが生まれ、格差是正に対する圧力は強まる。企業は賃金制度改定などの対応に迫られることになりそうだ。

日本経済新聞

「106万円」社会保険料

  • 2016-10-04 (火)
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「106万円」社会保険料

日本経済新聞 

 103万円と130万円。主婦の多くは世帯収入が減らないように年収を自主規制しながら働いている。このうち「130万円の壁」の原因となっていた社会保険の加入条件が10月に広がった。新たな目安は年収106万円。法制度が作り出す年収の壁に翻弄される、働く主婦の行方を2回にわたって追う。

 「現在年収120万円。私はどうすれば良いのですか?」。日本FP協会(東京・港)の無料電話相談に主婦の問い合わせが相次ぐ。相談員を務める上級ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)の鈴木暁子さんは「手取りが減るのか変わらないのか。制度変更の影響を尋ねてくる」と話す。

 夫がサラリーマンの場合、従来は年収130万円未満ならば妻は夫の扶養者となり、社会保険料を払わずに済んだ。そのため130万円を超えないように就業調整する妻が多く、「130万円の壁」と呼ばれていた。今回の改定は、この壁を崩し、主婦の就労を促して社会保険料を負担してもらう狙いだ。

 「今年7月から1日8時間、週5日働くように見直した」と損害保険ジャパン日本興亜(東京・新宿)のパート社員、田中幸恵さん(42)は話す。大学を卒業して保険会社に就職したが、夫の転勤に伴って退職した。その後は長男と長女の子育てを優先。2012年に再就職してからは、年収を130万円未満にするために1日の勤務時間と毎月の日数を抑えていた。
 従来と同じ働き方だと社会保険料を払わなくてはならない。「どうせ払うことになるなら、年収を気にするのはやめた」。会社の後押しもあり、責任の重い仕事を任されるようになり、やりがいも高まった。
 政府試算では、今回の改定で新たに25万人が社会保険の適用対象になる。ただ田中さんのように働き方を積極的に見直す主婦ばかりではない。

 人材派遣・紹介会社ビースタイル(東京・新宿)が9月に実施した調査(パート雇用者ら799人が回答)によると、「今より年収を上げて扶養枠を外す」は19・5%で、「年収を下げて扶養枠内に収める」は39・8%と大差がついた。「稼いだ分を保険料で取られては働き損」などの理由からだ。政府の思惑に反して、制度改定は主婦の就労抑制も招いている。

 主婦パートを多数雇用する会社は対応に追われている。勤務時間を増やすパートと減らすパートがほぼ均衡していれば職場は今まで通り回るが、減らすパートが多くなるとその分の仕事を補う人手が必要だ。イオンは「心配なのは12月。例年パート社員は年収を調整するために年末に向けて就業時間を調整する。社会保険の適用拡大が年末の就業調整にどう響くかが読めない」(広報担当)と話す。
 社会保険料は勤務先と雇用者が折半して負担する。パートがその対象となれば企業の社会保険料負担も増える。社会保険の適用拡大が国会で決まったのは12年。当時、企業の多くはパートの就業時間を短くし、社会保険の適用を免れる戦略を練っていた。
 

 だが企業の姿勢は変わった。パート活用に関するコンサルティング会社・働きかた研究所(東京・中央)代表取締役の平田未緒さんは「少子化で急速に人手不足感が高まった。社会保険料を負担してでもパートに活躍してほしいと考える企業が増えた。消極的にならず、追い風を生かす道も考えて」と助言する。

 これまで社会保険は一般的に週30時間以上働く人が加入対象だった。10月以降は別表のように条件が変わる。意外な盲点は(4)だ。CFPの鈴木暁子さんは「年収が106万円を超えていても、勤務先の従業員が500人以下なら対象外。収入に影響はない」と話す。

 鈴木さんの試算(東京都在住、40歳未満などを条件)では、社会保険の適用拡大で手取り減少額は年10万円を超える。130万円をわずかに下回る年収で働いてきたサラリーマンの妻の場合、従来とほぼ同額の手取り収入を得るためには年収150万円の働き方に変える必要がある。
 世帯収入で考える場合は、夫の勤務先の家族手当制度も加味する。支給条件を妻の年収103万円や130万円に定めている企業は多い。年収がこれらを上回ると、夫は家族手当をもらえなくなる。

 政府試算では、新たに社会保険の対象になる月収8万8千円の雇用者が年金保険料(月額8千円)を20年払えば、将来受け取る厚生年金が年額約11万6千円増える。鈴木さんは「目先の手取りだけでなく、長期的視野で生活設計を考えることも大切だ」と話す。

働く主婦壁は消えるか

 多くのパート主婦らは配偶者控除などの恩恵を受けるために、年収が103万円を超えないように働いている。この「103万円の壁」が崩壊する可能性が出てきた。労働力減少を背景に、主婦に就労を促進しようと政府が配偶者控除の見直しに着手した。人手不足に悩む企業も主婦の潜在力に期待する。社会からのラブコールに主婦は応えられるのか。

 「パートや派遣、契約社員。これまでいくつも仕事を変えてきたけれど、年収はいつも102万9000円と決めていた」。東京都の主婦(36)はこう話す。大学卒業後に商社に入社。8年勤めて結婚し退職した。現在は派遣社員として1日6時間週3日仕事に出ている。

◇  ◇
 「103万円の壁」を自身で設けてきたのは配偶者控除を意識していたから。年収が上限を超えそうになり、勤務先と交渉して給与の一部を交通費名目に切り替えてもらったこともある。でも、就業調整はこの秋でやめる。「今の勤務先は人手が足りず『もっと働いてほしい』と前から言われていた。国の動きを見ていると主婦として働き方をセーブし続けられそうにない。勤務時間・日数を増やしたいと勤務先に先日伝えた」

 10月の社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用拡大は主婦に就労を促す第1弾。二の矢、三の矢を政府はすでに準備する。9月15日、政府税制調査会で配偶者控除の見直し議論が始まった。27日には働き方改革実現会議がスタート。同じ仕事をしていたら非正規社員にも正社員と同じ賃金を払うという同一労働同一賃金の導入が検討される。実現すればパートらの時給アップが想定され、年収を低く抑えるのが難しくなる。

 企業も先手を打って動く。「勤務時間を延ばしませんか?」。首都圏・近畿圏でスーパーマーケットを運営するライフコーポレーションは今春以降、パートとの個別面談で直属上司が呼びかけた。対象は年収約106万以上130万円未満の約3600人。10月の制度改定で社会保険の加入義務が生じる主婦らだ。人事本部の大庭祐一担当課長は「週20時間働いていたパートは週24時間働かないと手取りが減る。ならば思い切って収入を増やす道もあると示したかった」と説明する。

 就労意欲を高める仕掛けも整えた。2015年にパートの職級と給与体系を見直し、実力に応じて昇給できるようにした。16年5月には転勤を伴わないエリア正社員制度を新設。家庭の事情を抱える主婦パートが正社員に転換しやすくするためだ。「このところ採用難が深刻。主婦パートが長く働き、キャリアアップしてもらえれば会社にもプラスになる」と大庭さん。要請に応えて約1200人が勤務時間を延ばした。

◇  ◇
 東京都は今秋から、仕事と子育て両立支援合同就職面接会「レディGO! Project」を開いていく。子育て中の主婦の再就職を支援する。9月20日に立川市で開催した同イベントには主婦ら約250人が集まり、求人中の企業16社の話に耳を傾けた。

 現在求職中の主婦(37)は14年に夫の転勤で正社員の仕事を辞めた。「子どもが幼いのでいきなりフルタイムは無理だけれど、103万円や130万円など制限して働くなんて意味がない」と各社の求人情報に目を通す。ただ参加者からは「働きたくとも保育園に入れない」(38歳、1児の母)、「夫に家事・育児の協力は期待できず、長時間は働けない」(36歳、2児の母)との嘆きも漏れる。

 「103万円の壁」や「130万円の壁」を法制度で切り崩しても、保育所整備や男性の家事・育児参加などが同時に進まないと主婦を追い詰めるだけだ。
 仕事内容も課題だ。企業勤務経験があり、能力の高い主婦は多い。ビースタイル(東京・新宿)しゅふJOB総研所長の川上敬太郎さんは「パートや派遣でもやりがいのある仕事を提供できれば、年収を気にせず働く主婦が増えるだろう」と指摘する。

配偶者控除 ついに見直し?
 配偶者控除は1961年にできた。配偶者の年収が103万円以下の場合、夫は所得税38万円、個人住民税33万円の所得控除が受けられる。夫が仕事に集中できるのも、家事・育児を担う妻の支えがあるからこそ。そんな内助の功に報いるための仕組みだ。ただ制度導入当時は専業主婦世帯が主流だったが、今や共働き世帯が多数派だ。世帯構造の変化に配偶者控除は取り残されている。

 政府・自民党は配偶者控除を見直す方針だ。狙いは主婦の就労促進。「103万円の壁」が働く主婦層の意識に浸透し、年収が増えないように勤務時間を抑制するケースが絶えない。共働き世帯の中では夫フルタイム・妻パートという組み合わせが多い。生産年齢人口の減少を補うためにもパート主婦の就業調整を減らしたい。年内にも内容を固めたい考えだ。

 ただ税制上の「103万円の壁」は実はすでにない。年収103万円を超えた段階で手取り収入が激減しないよう特別措置を講じているからだ。だが、配偶者手当制度を持つ企業の約6割が年収103万円を支給基準としており、多くの世帯で妻は年収を103万円に抑えている。税制改正と同時に、こうした企業への働き掛けも欠かせない。

日本経済新聞

違法残業月111時間

  • 2016-10-02 (日)
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違法残業月111時間 

産経新聞

「和食さと」「すし半」「さん天」などを展開する飲食チェーン大手、サトレストランシステムズ(大阪市中央区、東証1部)が、従業員に違法に時間外労働をさせ、残業代の一部を支払わなかったとして、大阪労働局は29日、労働基準法違反の疑いで、法人としての同社とさん天事業推進部長、店長4人を書類送検した。

 労働局によると、サトは時間外労働の限度(月40時間)に関する労使協定(三六協定)を店舗ごとに結んで労働基準監督署に届け出ていたが、労働者代表の選出に不備があり、有効な協定として認められていなかった。

 

書類送検容疑は平成27年、本社と大阪府内のすし半、和食さと計4店で、従業員7人に対し最長で1カ月111時間~49時間の時間外労働をさせ、うち2店では3人に割増賃金の一部(計約30万円)を所定支払日に支給しなかったとしている。

 

同社は調査委員会を設置して全店舗で未払い賃金を精査。延べ653人に26~27年分の計約4億円を支払った。

産経新聞

新介護 軽度向け事業所半減 

  • 2016-10-02 (日)
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新介護 軽度向け事業所半減 

毎日新聞

軽度の介護サービスは縮小の流れ

 軽度(要支援1、2)の介護保険利用者に対する訪問介護とデイサービスで、低報酬にした新方式の介護サービスに参入する事業所数が、従来の報酬でサービス提供していた事業所の5割未満にとどまることが、毎日新聞による全国157自治体調査でわかった。

新方式は事業所への報酬を下げるのが原則で、それまでサービスを提供していた事業所が「採算がとれない」と参入を見送っている。今後は要介護1と2の訪問介護も低報酬の新方式となる可能性が高く、軽度の人たちが受け皿不足で必要なサービスを受けられない事態が懸念される。

 

軽度者向けの訪問介護(掃除や炊事などの生活援助)とデイサービスは、全国一律の基準だったが、2017年4月までに各自治体が実施主体となる方式に替わる。社会保障費を抑えるため、国は報酬を従来以下にする新方式を設けた。

 

すでに低報酬型の基準を決めた市など157の先行自治体に聞いたところ、報酬は平均して2割減に設定されていた。手を挙げた事業所は訪問介護で50%弱、デイサービスでわずか30%弱だった。

 

低報酬の新方式について事業所側は「ビジネスが成り立たない」と渋る。担い手確保のため国は無資格の人でも働けるようにしたが、従来のヘルパーのようなきめ細かい支援が受けられない高齢者もいる。これまでとほぼ同じ報酬のサービスも残ってはいるが、国が支出抑制の方針を示しているため、実施主体の自治体が今後維持できなくなる可能性が強い。

 

厚生労働省の審議会は現在、要支援より介護度の高い要介護1と2の生活援助見直しについて議論している。原則利用者の自己負担となるか、低報酬の新方式に切り替えられる可能性が高い。

 【ことば】要介護と要支援

 介護保険法などによると、要介護は、体のまひなど「身体上」、認知症など「精神上」の障害があり入浴や排せつ、食事などに常に介護が必要な状態を指す。最も深刻な要介護5から1の5段階にランク分けされる。要支援はそれよりも程度が軽く2段階に分かれ、悪化を予防する支援の必要がある状態を指す。

毎日新聞

「非正規に労災ない」は間違い

「非正規に労災ない」は間違い

毎日新聞

正規か非正規かを問わず、仕事中のけがや病気は労災保険の給付対象になる=東京都内で

 業務上の理由でけがをしたり、病気になったりしたパート、アルバイト、契約社員などの非正規労働者は労災保険の給付対象ではない--などと、したり顔で語る経営者や人事担当者がいますが、こんな犯罪的な発言を信じてはいけません。ファミリーレストランでやけどを負った契約社員の40歳女性のケースをもとに解説します。

【NPO法人ほっとプラス代表理事・藤田孝典】

 

◇「働けなくなったら辞めてもらってますから」

 ファミリーレストランに勤めていた女性(40)に対するレストラン運営会社の人事部長の発言は、ほとんど犯罪的でした。わざと言っているか、無知かのどちらかでしょう。

 シングルマザーの彼女は、レストランのホールで契約社員として働き、生計を立てていました。ところがある日の勤務中、棚からものを取ろうとして転び、近くにあった高温の油で左腕全体にやけどを負ってしまいました。

 重いやけどで、治療にはお金も時間もかかります。運営会社の人事部長に相談したところ「契約社員やパート・アルバイトに労災は認められないから」と軽く言われ、結局仕事を辞めざるを得なくなって、途方に暮れてうちに相談に来ました。収入が途絶え、強い不安を抱えていました。

 しかも、彼女は「働けなくなって会社にひどく迷惑をかけてしまって……」とまで言うのです。猛烈に腹が立ってきました。

 彼女のケースは100%労災です。療養費と休業補償が出て当然ですが、私たちが乗り込んだ先で、会社の人事部長はこう言い放ちました。

 「うちは契約やパート、アルバイトには労災認めてないんですよ、慣行で。働けなくなったら辞めてもらってますから」

 久々に、開いた口がふさがりませんでした。

 

労働基準法は、労働者が仕事上の理由で病気やけがをしたときには、使用者(会社)が療養費を負担し、働けないときは休業補償をすることを義務づけています(第75、76条)。

 しかし、事業主にその能力がない場合、労働者が補償を受けられず、困窮する恐れがあります。そこで、確実に補償を受けられるよう、国が包括的な労災保険制度を設けた経緯があります。従って、労災保険の補償対象は、労働基準法が規定する労働者すべてと解釈されています。

 労働者とは「職業の種類を問わず、事業又(また)は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」(労働基準法第9条)です。パートやアルバイトも含むすべての労働者のことです。

 人を雇って会社を経営する人は、まずこれらの労働法制を知っておくべきでしょう。それ以上に、働く側も正しい知識と権利意識を持ってほしいのです。会社の業務をしていてけがをしたり、病気になったりしたら、療養費と賃金は必ず補償される--これは常識以前の常識です。

 パート、アルバイト、契約社員に労災を認めない会社の話は多く聞きます。経営者がそう思い込んでいるケースがあり、労働者自身がそう思っている場合もあります。

 大学の講義で、学生たちに質問をしました。「大学生が建設現場でアルバイトをしていて、足場から落ちてけがをしました。労災保険は適用されますか」

 学生の半分は「アルバイトだから無理でしょう」という答えでした。根拠もなくそう思い込んでいました。

 パート、アルバイトに有給休暇があることを知らない人も多いようです。半年働いたら、働いた時間にもよりますが有給休暇を取得できます。そのことを知らない人がいる一方で、知っていても「人事上不利益を被るから使えない」と思わされている人もいます。

 

◇「個の弱さから病気になった」と主張する社会保険労務士も

 

「労災請求の履歴が残ると、将来の就職に影響を与えるからやめた方がいいよ」という、無責任で恥知らずな発言をする人事担当者もいました。

 精神を病んだ社員の依頼で、ある会社と交渉した際、会社側の社会保険労務士からこんなことを言われたこともあります。

 「個の弱さから病気になったのに、それを会社の責任にするんですか? 労災申請して会社に負担をかけるのは、常識的に考えておかしいですよ」

 事実に基づき、労働ルールに則した解決を求めているのに、モラルを持ち出されて脱力しました。人事担当者や社会保険労務士がみな労働法制にも詳しく、ロジカルな人たちであるとは限りません。労働組合のことを知らず、労働ルールに詳しくなく、働く人を軽く見ている人もたくさんいます。

 もしもあなたが立場の弱い契約社員やアルバイトで、1人で会社と交渉するのが怖かったら、交渉に慣れている独立系労働組合やNPOを頼ってください。会社側がどれほどゴネても、事実関係が明らかである限り、労働組合の側が勝ちます。労働法制はそのように作られているからです。

 冒頭の契約社員の女性はもちろん労災保険を請求し、療養費が全額給付されました。

毎日新聞

高齢者雇用推進の課題2

高齢者雇用推進の課題

近藤絢子東京大学准教授――企業に過度の負担避けよ、65歳以上、一律延長は困難(経済教室)

日本経済新聞

ポイント
○60代前半の男性就業率は驚くべき高水準
○継続雇用導入でも若年層の雇用失われず
○高齢者に特化した職業紹介の充実検討を

 高齢化の進展に伴い、生産年齢人口の減少による労働力不足や、社会保障財政のさらなる悪化が見込まれている。この解決策の一つとしてしばしば挙げられるのが高齢者の雇用促進だ。就業可能な高齢者の雇用を促進することで労働力不足を補うとともに、高齢者自身の社会保障への依存度を下げる効果もある。「生産年齢人口」の定義自体を広げることにより、高齢化に対抗する戦略ともいえる。

 まずは日本の現状を確認しよう。2001年以降の60代前半、60代後半、70歳以上の就業率の推移を図に示した。00年代初頭の時点で既に60代前半の就業率は50%を超えていた。06年に施行された改正高年齢者雇用安定法による継続雇用措置導入の義務化の後、60%近くまで急上昇した。08年のリーマン・ショック後にはやや停滞するが、10年代に入って再び上昇に転じ、15年には62%に達している。

 60代後半の就業率も上昇傾向にあり、特に10年代に入ってからの伸びが著しい。これは男女計の数字であり、男性に限れば60代前半で4人に3人、60代後半でも半数が就業している。欧州では60代前半の男性の就業率が2~3割程度の国も珍しくなく、米国でも50%程度であることと比較すると、驚くべき高水準だ。

 00年代半ばに60代前半の就業率が上昇した背景には2つの大きな制度変化がある。まず01年以降、年金支給開始年齢が段階的に引き上げられ、その分働いて収入を得る必要があるため、労働供給が徐々に増えていった。ところが定年退職年齢は60歳のままなので、退職後に年金を満額もらえるまでの期間の雇用機会を確保する必要が生じてきた。

 そこで06年に高年齢者雇用安定法が改正され、65歳(移行措置により1946年生まれは63歳、47~48年生まれは64歳)までの継続雇用措置導入が義務付けられた。さらに13年には、継続雇用措置を希望者全員に適用することを義務付ける改正がなされた。厚生労働省の発表によれば、15年6月現在、60歳定年制企業の定年到達者の8割が継続雇用を希望し、そのほぼ全員が継続雇用されている。

 筆者とカナダ・サイモンフレーザー大学の重岡仁助教授による研究では、06年4月施行の改正高年齢者雇用安定法は、60代前半の男性の就業率を有意に上昇させたことが明らかになった。さらに60代前半の雇用者の増加のほとんどは、従業員規模500人以上の大企業によるものだった。

 企業規模により効果が違うのは、法改正前の60歳以降の就業継続率の違いによる。大企業では00年代半ばまでは60歳で定年退職し、そのまま引退する人が多かった。一方、中小企業ではもともと60歳を過ぎても働き続ける人が大多数を占めていたので、あまり変化の余地がなかったのだ。

 このように高齢者の就業促進政策は順調に成果を上げているが、同時に高齢者ばかり優遇されて若者の雇用機会が奪われているのではないか、という懸念の声が出ている。この点について厳密に検証することは、データの制約などもあり難しい。しかし実は、筆者自身の研究を含めたほとんどの実証分析では、65歳までの継続雇用措置の導入がより若い年齢層の雇用を減らした可能性は低いという結果が出ている。

 その代わり00年代後半に、特に大企業では60歳以上の平均年収が他の年齢層と比べても大きく下がった。このことから、若い社員を減らすのではなく、継続雇用者の賃金を低く設定することで総労働コストを抑えようとしている企業が多いことがうかがえる。

 若い世代の雇用に対して目立った副作用が出ないのは、「継続雇用措置導入の義務化」という比較的緩やかな規制にとどまっているためかもしれない。継続雇用措置導入の義務化に伴い多くの企業が実施したのは、60歳で一度定年退職した後に、再度雇用契約を結ぶ再雇用制度だ。再雇用契約では、定年前とは全く違う仕事内容で大幅に給与を引き下げることが許容されており、同じ契約のまま雇用を継続する「定年延長」に比べると企業側の負担は軽い。

 法律上は、定年延長や定年制の撤廃も継続雇用措置導入とみなされる。しかし厚労省の調査によれば、定年を65歳以上に延長したり定年制度を撤廃したりした企業は、15年6月現在で2割にとどまる。

 また、これまで20代の若手社員がしていた仕事を60代のベテラン社員にやらせるわけにはいかない職場も多いだろう。つまり若年労働者と高齢労働者は必ずしも直接的に代替可能ではないのである。

 代替可能性という点でいえば、むしろ再雇用制度で働く高齢者と、中高年女性のパートタイム労働者の間には代替関係が生じている可能性がある。とはいえ労働市場全体でパートタイム労働者の需給が逼迫している現在では、高齢者が中高年女性の雇用を奪っているというよりは、むしろ人手不足を緩和する一助になっているとみるべきだろう。

 このようにこれまでのところ、日本の高齢者雇用促進政策は大きな副作用をもたらすことなく、一定の成果を上げているようにみえる。ただしこれまでの政策の主なターゲットだった60代前半の就業率は既に6割を超えており、伸びしろはあまり大きくない。

 今後ますます高齢化が進展することを考えると、65歳以上の就業率を上げていく必要が出てくる。だが高齢になるほど体力の個人差が大きくなり、健康上の理由から就業を続けることが困難となるケースが増えてくる。このため、これまでのようにある年齢までの継続雇用を一律に課すアプローチには限界がある。

 雇用政策にあたって本来目指すべきなのは、年齢に関係なく働きたい人が働ける社会であろう。これを突き詰めると、定年制の廃止を含むあらゆる年齢差別の撤廃が必要となってくる。
 とはいえ大企業を中心に年功的な賃金体系が依然として残る現状では、定年延長や定年制の撤廃を無理に推し進めると、勤続年数が長く賃金が上がりきってしまった高齢労働者をいつまでも抱え続けなければならなくなり、企業の収益を大きく損ねかねない。

 90年代後半以降、徐々に賃金体系がフラット化してきてはいるが、既存従業員の賃金を大幅に引き下げることは難しいため、変化には時間がかかる。企業に過度の負担を求める政策は、経済活動の停滞を招き、結果的にはむしろ雇用を減らしてしまうことを忘れてはならない。

 そもそも現時点でも、高年齢者雇用安定法による継続雇用措置義務化の対象は65歳までであるにもかかわらず、60代後半の男性の半数以上は就業している。中小企業の多くは、従業員が定年に達したからといって機械的に退職させるのではなく、本人が以前と同じように働ける間は条件をほとんど変えずに雇用を継続してきた。

 10年代に入って、特に大きな政策変化があったわけでもないのに60代後半の就業率が上昇しているのも、人手不足による労働需要の増加を反映しているものと考えられる。
 今後若年人口が減っていく中で、高齢者を活用したい企業はますます増えていくことが予想される。従って、自発的な高齢者活用を後押しするような政策、例えば高齢者に特化した職業紹介の充実などにより、比較的小さなコストで大きな効果を上げられるのではないかと思われる。

 こんどう・あやこ 79年生まれ。コロンビア大博士(経済学)。専門は労働経済学

日本経済新聞

高齢者雇用推進の課題 

高齢者雇用推進の課題 

脇坂明学習院大学教授――企業内キャリア継続、重要、労使納得する賃金体系に(経済教室)

日本経済新聞 

ポイント
○福祉的雇用でなく高齢者の戦力化が必要
○60歳までと60歳以降つなぐ配置や処遇を
○高齢者が自ら引退時期決める形が理想的

 政府の「一億総活躍プラン」では、女性だけでなく高齢者の活躍も期待されている。また2013年4月施行の改正高年齢者雇用安定法で、定年退職後の希望者全員に関して65歳までの雇用が企業に義務付けられた。「人手不足」が深刻化する昨今の雇用状況下で改めて高齢者が注目されている。高齢者雇用の課題は何か、どのような処方箋が考えられるのか検討したい。

 政府のプランの背景には、中長期的な労働力人口減少への対応という量的側面の課題があろう。マクロの労働力人口の観点からは65歳までの労働力率上昇だけでは足りず、70歳まで、あるいはそれ以上の年齢についても労働力人口が必要だろう。しかし本稿では量的側面でなく、質的側面から高齢者が働くための課題に焦点を絞る。主に中規模以上の企業での65歳までの高齢者雇用推進の課題を考える。

 なぜ質的側面かというと、現状の高齢者雇用に「福祉的雇用」の面が強いからだ。
 法改正以前から、60歳定年以降の60歳代前半層の処遇については再雇用という形で継続雇用し、仕事内容は同じでも賃金はかなり下がるケースが多かった(図参照)。生活が困らないように公的な給付金などで補い、雇用の場は確保するという企業の姿勢のため、「福祉的雇用」の性格を払拭できなかった。社員の労働意欲低下をどう防ぐか、これが今もって大きな課題だ。

 では「福祉的雇用」を脱して、高齢者を「戦力化」するには、どうすればよいのか。
 社会全体でみても、高齢者の能力が最も生かせる職場はおそらく今までの経験が最も豊富な職場だろう。企業が高齢者を戦力化する際の基本となる前提だ。数十年前までよくみられたような定年退職後は会社の駐車場管理に移るといった、仕事内容だけでなく賃金決定方法も水準も変えるという「活用」は、最も戦力化から遠い方法といえる。

 では仕事内容を継続できるようにし、賃金決定方法も仕事に対して払う賃金にする、いわゆる「同一労働同一賃金」に変えれば解決するのか。
 この方法自体を推奨できないし、実施するにしてもかなりの困難を伴う。50歳代までの社員と60歳以降の社員の仕事で「同一労働」を確定するのはかなり大変な作業だ。処遇に直結する仕事の要素にどのようなものを入れ、社員が納得するような要素のウエートを作成するのは、現場をよく知る有能なコンサルタントでも神業に近いだろう。

 本当の問題は、「同一労働」などの仕事を確定できたとしても、企業は人材育成の面からそれを全面的に適用できないところにある。つまり50歳代半ばまでの壮年層とそれ以降の高年層では、企業が求める社員像が異なるためだ。

 前者は仕事を通じて人材を育成し(職場内訓練=OJT)、将来の能力向上まで考慮した賃金決定が中心だ。一方、後者は今の能力を現在の仕事で活用するといった賃金決定が中心となる。社員を本当に活用しようとすれば、期待される残りの在籍年数の違いから賃金決定方法が異なることになりやすい。
 社員の育成や活用を無視して、完全に仕事と報酬を一致させれば、同一労働同一賃金は実現するかもしれないが、肝心の社員の能力向上による企業の付加価値向上にはマイナスの影響を与える可能性がある。これでは本末転倒だ。

 ここで高齢者の雇用の大きな枠組みを考察してみよう。働く側から望ましいのは定年制の廃止、もしくは定年年齢の65歳への引き上げだろう。これはある規模以上の企業にとって受け入れがたい。その理由の本質はいわゆる「情報の非対称性」であり、賃金に見合った高齢者の能力を正しく識別できないことにある。
 ゆえに多くの大企業は今後も、60歳定年後に継続雇用する形をとるだろう。多くの高齢者が再雇用されることになろうが、その時に仕事内容が同じで直前の賃金より大きく下がると労働意欲やプライドに悪影響を及ぼす。一方、仕事内容を変えると高齢者の能力を生かせない。

 この枠組みしかないとすれば、60歳までと60歳以降をスムーズにつなぐ配置や処遇により高齢者を活用するしかない。その時の肝は、企業内キャリアの継続性にある。
 これまで大企業は60歳までといいながら、現実にはおそらく50歳代半ばまでのキャリア支援を前提として人事異動を実施してきた。これを65歳まで働くことを前提としたキャリア支援体制に変えなければならない。途中で賃金決定方法が変わることを織り込んだキャリアデザインを、社員と企業が納得する形で構築する必要がある。

 高齢者活用にあたり重要なのは技能継承だ。技能には生産現場の技能だけでなく、様々なホワイトカラーの仕事の進め方や人的ネットワークも含まれる。技能継承は高齢者本人の労働意欲を向上させるだけでなく、次世代の社員の能力向上にも役立つ。

 人は自分の得意とすることを教えることに喜びを持つ。それだけでなく教えてみて、初めて自己の技能の長所と弱点に気づくこともある。
 様々な調査が、高齢者の技能継承がうまくいっていないことを示している。再雇用者は正社員と社員区分が異なるから、一緒に仕事をしないといった職場の雰囲気になっているのであれば、人事制度が能力や生産性を無視したものになっていることになる。

 もう一つの重要な点は短時間労働の問題だ。高齢者は家族や健康状態などから壮年者よりも多種多様な勤務時間の希望があろう。再雇用者に限らず多くの勤務パターンを用意すべきだが、少なくとも再雇用者には何十通りかの選択肢を与えた方がよいだろう。

 例えば、技能継承のための若手との勉強会や、海外勤務時の課題などを話す曜日を決め、それが高齢者や家族の通院の曜日と重ならないように調整できれば、高齢者にとって充実したワークライフバランス(仕事と生活の調和)を提供できるだろう。

 その際の高齢者パートの賃金決定方法については、学生アルバイトや主婦パートと同じにしてもよいが、主婦パートにかなりの能力向上を期待するような企業(職能給採用企業)であれば、異なる決定方法にした方がよい。ここでも同一労働同一賃金の問題が生じる可能性があるが、仕事内容の質が大きく異なるので職場の納得感は得やすい。

 高齢者活用で留意すべきは健康との両立だ。全く健康に問題のない高齢者はごくわずかだろう。そうした高齢者だけを活用の対象にするのは現実的でない。当然ながら、これは60歳以降の社員だけでなく中年以降、すべての社員に共通の課題だ。60歳以降の高齢者のみ、健康のことで活用を尻込みするのは筋違いだ。

 最後に日本の多くを占める小企業について触れたい。ここでは大企業と異なり、情報の非対称性が存在しない。そのため1985年ごろまでほとんど定年がなかった。自営業の世界とイメージが近い。自営業では定義上、定年は存在しない。身体や能力面で、もう続けられないと思った時に自ら「引退」するわけだ。

 定年はある年齢での一律強制解雇という制度だ。この慣行はどこの国でもみられるが、採用しているのはおおむね大企業だ。大企業の中で自営業のようなハッピーリタイアメントに近いものが実現できるかが、わが国高齢社会の健全性を測る尺度となろう。

 わきさか・あきら 53年生まれ。京都大博士(経済学)。専門は労働経済学

日本経済新聞

産後健診にうつ予防

産後健診に公費助成、うつ予防など…来年度から

 産後うつなどの予防のため、厚生労働省は来年度、出産したばかりの母親を対象とした健診への公費助成を始める方針だ。

 心身の不調がある母親を早期に発見し、医師や助産師らによる支援につなげる。

 産後健診は、子どもを産んで2週間後、1か月後などの時期に、出産した医療機関で行う。ただ、実施しているのは一部の市町村にとどまっており、同省は2017年度予算の概算要求に14万人分の助成費用7億円を盛り込んだ。国と市町村が、2回分の健診費用を半額ずつ負担する。

 授乳がうまくいっているか、育児で周囲の支援が得られているかなどを確かめる。産後うつになりやすかったり、子どもを虐待するおそれがあったりする母親には、助産師らが、育児や心身の健康管理のアドバイスを行う市町村の産後ケア事業を紹介したり、精神科の受診を勧めたりする。

読売新聞

賃金を上げるには

  • 2016-09-19 (月)
  • news

賃金を上げるには(景気指標)

日本経済新聞 

 日銀は20~21日の金融政策決定会合終了後に、3年あまり続けてきた異次元の金融緩和の「総括的な検証」の結果を公表する。

 今回の検証に含まれるか否かは不明だが、消費者物価と同様、賃金が伸び悩んだことも日銀の誤算のひとつだろう。

 名目賃金から消費者物価上昇率を差し引いた実質賃金をみると、6月と7月はいずれも前年同月比で2%の上昇だ。上昇率は2010年半ば以来の大きさとなった。

 しかし、消費者物価はマイナス圏のため「物価が上がり、賃金がそれ以上に上がる」という理想的な状況にはほど遠い。

 底堅い企業収益を背景に賃金が安定的に上昇していけば、実際の物価も、予想物価上昇率も上がりやすくなる。海外からはそんな指摘が相次いでいる。

 「民間の賃金上昇の誘因策を」と安倍晋三首相らに説いたのは、ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏だった。8月には国際通貨基金(IMF)が「アベノミクスを再び軌道に乗せよ」と題した提言で議論に加わった。

 日本では、労働市場が賃金水準の高い正社員と低い非正規労働者に二極化し、全体の賃金上昇圧力が高まりにくい、とIMFは指摘している。

 働き方改革の柱として非正規労働者の待遇改善を主眼に置く「同一労働同一賃金」の推進は、物価押し上げという副次的効果をもたらすだろうか。

 IMFは高収益の企業を対象に3%の賃上げも求めている。3%とは2%の物価目標に1%の生産性上昇率を加味した数値。企業統治指針のやり方にならい、政府が企業に「従うか、従わないなら説明を」と迫る案だ。

 さらに、政府が物価安定目標に沿って、公務員の給与を率先して引き上げる案もある。ただ、民間の賃金実績を踏まえて公務員給与を決める今のやり方を変えなくてはならない。

 アイデアは他にもある。持続的な賃金と物価の好循環づくりに向け、政府・日銀はもっと突っ込んで協力策を協議してはどうか。

日本経済新聞

配偶者控除の廃止

  • 2016-09-19 (月)
  • news

キラキラ主婦「VERY妻」は、配偶者控除の廃止で幸せになれるのか

BuzzFeed Japan

キラキラ主婦「VERY妻」は、配偶者控除の廃止で幸せになれるのか

働く「VERY妻」も増えている

いま、日本の主婦たちに圧倒的な人気を誇る女性ファッション誌「VERY」(光文社)。発行部数は約29万8000部(2016年4~6月、ABC調べ)。ずっしりと重いこの雑誌の愛読者は「VERY妻」と呼ばれている。
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いわゆる「勝ち組」

10月号からは、表紙モデルが女優の井川遙さんから、滝沢眞規子さん(通称・タキマキ)に。

専業主婦だった滝沢さんは、家族で買い物しているところをスカウトされ、読者モデルになった。シンデレラの階段を駆け上がった3児の母だ。

「基盤のある女性は、強く、優しく、美しい。」

そんなキャッチコピーに象徴されるように、妻として母として女性として、人生をポジティブに楽しむ「VERY妻」は、いわゆる「勝ち組」の代名詞ともいえる。 その生活基盤が比較的高い夫の収入に支えられていることは、雑誌に掲載されている広告のブランドなどからも、うかがえる。

「VERY」の創刊は1995年。東京・港区の白金に住む専業主婦を「シロガネーゼ」、趣味のフラワーアレンジメントなどの教室を自宅で開く主婦を「サロネーゼ」と呼ぶなど、主婦たちにアイデンティティーを与え続けてきた。
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読者の過半数が「働く主婦」に

その「VERY」が2013年、ついに「働くママの、幸せな時間」という特集を組む。

あくまで「家族が一番、仕事が二番」ではありながらも、「働く主婦」という新路線を打ち出した。VERY編集部が実施した読者アンケートでは、過半数が働いており、その勤務形態は正社員が半数だった。

「VERY妻」に人気の街、東京・世田谷区では、認可保育園の入園希望者がここ5年間で1.4倍になるなど、もはやVERY妻とて、消費ばかりしているわけにはいかなくなったようだ。
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「配偶者控除」が廃止される

そして浮上したのが、「配偶者控除」の廃止だ。

自民党の茂木敏充政調会長は9月14日のインタビューで、「配偶者控除」を見直し、代わりに早ければ2018年1月にも「夫婦控除」の導入を検討していると明らかにした。

現在の「配偶者控除」は、妻の年収が103万円以下なら、夫の課税所得から38万円を差し引くことで減税ができるというもの。専業主婦世帯が優遇されるため、パート・アルバイトの主婦は年収を抑えるために働き方を調整することもあった。

「夫婦控除」には夫の所得制限がある

「夫婦控除」は、女性の働く意欲を促すため、妻の年収にかかわらず一定額の税額控除をするというもので、共働き世帯が優遇される新しい制度。

ただ、配偶者控除にはない世帯主の年収制限が設けられる予定だ。ボーダーラインは「800万~1000万円」の範囲で検討されている。

「VERY妻」は大丈夫なのか?

BuzzFeed Newsはファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんの監修のもと、夫婦控除が導入されると「VERY妻」が今よりも損するか得するのかをシミュレーションした。(夫婦控除は税額控除として検討されるが、ここでは仮に、配偶者控除と同じ所得控除額38万円として比べることにする)
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結果は……

【夫が高収入の場合、妻の働き方が】

・専業主婦 → 損
・サロネーゼ(103万円以下)→ 損
・アルバイト(103万円以下)→ 損
・フルタイム(103万円超)→ 同じ

【夫が低収入の場合、妻の働き方が】
・フルタイム(103万円超)→ 得
(※夫が高収入とは、所得制限にかかる場合のこと)

例えば、夫が1000万円稼ぎ、妻が優雅にサロンを開いているような家庭は、新たに設けられる所得制限のために控除がなくなる。

一方、最近のVERY読者層の主流である「働く妻」にとっては、これまでなかった控除が適用される可能性がある。夫だけで1000万円稼ぐと所得制限にかかるため、「夫600万円・妻400万円」など、妻もキャリアを追求する働き方をしたほうが節税になる。

夫婦ともに稼ぎ、家事や育児を分担することで、VERYが提唱する「イケダン」(家事や育児に理解があるイケてる夫)がますます増えるに違いない。
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ただし今のところ、独身者や離婚者は「夫婦控除」の恩恵は受けられない見通しだ。

氏家さんは、「多様な家族形態がある中で、せっかく配偶者控除を見直すタイミングなのに、夫婦しか恩恵を受けられない夫婦控除にすることそのものが時代遅れでイケてない」と指摘する。

「夫婦控除」が目指すべき社会は、きらびやかな「VERY」の誌上世界だけでは、語れないはずだ。

BuzzFeed Japan

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