- 2017-11-11 (土) 12:04
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支給漏れ、年金の「振替加算」――妻65歳から上乗せ、定期便で確認できず
公的年金で大規模な支給漏れがあったのは記憶に新しいでしょう。未払いだったのは「振替加算」と呼ばれる年金の上乗せ部分です。元公務員の妻らが対象でしたが、振替加算は会社員の妻も関係する身近な仕組みです。
会社員で妻や子がいると、勤め先から家族手当が支給される場合も多いでしょう。厚生年金(共済年金含む)にも似た仕組みがありますます。夫の年金に加算される「加給年金」です。定年後の世帯収入を補います。
加給年金は、妻が65歳になって自分の老齢基礎年金をもらい始めると、支給が打ち切られます。それに代わって、妻の年金に付くようになるのが振替加算です。加給年金と振替加算はワンセットのようにいわれる上乗せ制度です。
加給年金は原則、厚生年金の被保険者期間が20年以上ある夫が65歳(以前は60歳、段階的に引き上げ)になったとき、生計を共にする妻や子がいれば支給されます。国民年金にはない仕組みです。妻には恒常的な年収が850万円未満、厚生年金の加入が20年未満という条件があります。
加給年金の金額は夫の生年月日で異なりますが、多いのは年38万9800円(2017年度)です。妻が65歳未満であるという制限があります。このため、姉さん女房を持つ夫には原則、加給年金はありません。
専業主婦の年金加入は1986年3月まで任意でした。中には未加入の期間が長く年金額が少ない妻もいます。それだと世帯の年金受取額が減ってしまう場合があるので振替加算が設けられました。
振替加算は妻の年金として一生支給されます。もらい始めれば夫と離婚してもなくなりません。金額は生年月日に応じて決まっています。最低が年1万5028円(同)、最高が22万4300円(同)。高年齢ほど多額です。86年4月以降に20歳になった人(66年4月2日以降生まれ)には振替加算はありません。
妻が年上だと、夫の加給年金はありませんが、妻に振替加算が付くことがあります。年収など前述の条件を妻が満たせば、夫が65歳になったときから生年月日に応じて加算されます。その時点で妻はすでに自分の年金をもらっているので、新たに振替加算を請求する必要があります。
今回の支給漏れは、元公務員の夫の年金を管理する共済組合と、妻の年金を管理する日本年金機構の連携・処理ミスが原因でした。年上妻の届け出漏れもあったようです。
自分の年金に上乗せがあるかどうかは、年金受給を申請した後にもらう年金決定通知書や年金額改定通知書で確認できます。現役世代を対象とする「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」には書かれていません。夫が年金をもらい始める際の夫婦の関係などが基準になるからです。
上乗せを含む年金制度は「年上の夫が長く会社に勤め、妻は扶養家族という典型的な夫婦を主に想定している」と社会保険労務士の池田直子さんはいいます。そのため、想定された夫婦以外は特に注意が必要です。「自分の場合はどうか気になるなら、年金事務所に相談するとよい」と池田さんは助言します。
日本経済新聞