- 2017-11-20 (月) 23:03
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働き方改革、時間より場所――自宅や外出先で仕事、生産性1.6倍の試算も
政府は生産性革命を掲げ、設備投資や人材投資を促す。だが工夫次第で生産性はぐっと高まるかもしれない。自宅や外出先など、勤務先以外で働く「テレワーク」を導入した企業の労働生産性は導入していない企業の1・6倍という調査もある。働き方改革で労働時間の短縮を進める企業は多いが、働く場所も注目されてきた。
「きょうは最高気温が35度超になるのでテレワークを推奨します」。8月9日、ソフトウエア会社のインフォテリアは全社員にLINEなどで一斉に通達した。その日、社員の3割ほどが出社せず、在宅で勤務した。
さらば「痛勤」
社員が週に何日テレワークにするといった具合に決めるのが一般的なやり方だが同社では台風や大雪のときなど柔軟に取り入れている。サイト運用を担当する30歳代の社員は「案件の進捗状況や子どもの体調不良などで当日急にテレワークにすることもある」と話す。
「テレワーク」は耳慣れなくても「在宅勤務」ならピンとくる人も多いだろう。子育て中の社員の働き方として注目されたが、適用範囲を広げると企業にも従業員にもずっと多くのメリットがあることがわかってきた。
総務省の2016年度の調査ではテレワーク導入企業の労働生産性は導入していない企業の1・6倍になるという。実際、導入企業の9割が効果が実感できたとしている。
スタンフォード大学が、中国の旅行会社のコールセンター1万6千人を対象に9カ月間かけた調査では、テレワークはオフィスワークよりも13%仕事のパフォーマンスが上がったという。病欠などが減り、快適な環境が仕事をはかどらせた。
都心では「痛勤」と表現される通勤の肉体的・時間的な負担をなくせる点が大きい。通勤で体力を消耗することなく、仕事に集中できる。
企業の経営左右
3年後の東京五輪の開会式をにらみ、今年7月24日、922の企業・団体の約6万3千人が参加し、テレワークを一斉実施した。携帯電話の電波動向をもとに東京都心部の人口を調べると午前10時台で豊洲地区では同月平均より15%ほど少なかった。
日本生命保険は21年度から定年を65歳に引き上げ、国・地方公務員も同じように引き上げを検討している。人手不足で将来は定年は70歳代になるとの指摘もある。柔軟に働けるかは企業の経営をも左右する。
「テレワークの日」に参加した100人以上の企業の44%は情報通信系で、導入業種の偏りが大きい。米国の調査では柔軟な勤務形態の企業の割合は米中が61%、日本は20%だ。立ち遅れている分、生産性を高める大きな伸びしろが眠る。
消える社内立ち話
総務省、課題も指摘
いいことずくめに見えるテレワーク。日本テレワーク協会の今泉千明主席研究員は企業が心配する労務管理にも「テレワーク導入後の企業ではあまり問題になっていない」と話す。
ただ、会社側の労務管理や評価制度が整っても働き手が不安や孤独に陥りやすいという。会社からの用事や業務でのメールや電話はあるが、同僚とたわいない話をしたり情報交換をしたりする機会が非常に乏しくなる。コミュニケーションの不足や欠如が、個人の労働生産性を下げるという指摘もある。
「喫煙所やトイレでの立ち話で仕事が進むことが少なくない」。実際、テレワークを促進する総務省からも問題点が指摘された。こうした背景もあり、ヤフーやIBMなど先進的にテレワークに取り組んできた米企業が離脱する動きもある。
【表】IT企業の割合が大きい
情報通信・IT 38%
製造 16
情報サービス 6
サービス 5
アウトソーシング 3
建設 4
電気機器 4
不動産 4
保険 4
その他 16
(注)7月24日にテレワークを実施した922企業・団体のうち、100人以上の規模で実施した83企業の内訳
日本経済新聞
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