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賃金が伸びない40代

  • 2018-12-09 (日) 19:02
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賃金迷路 出世遅れ転職もできず、割を食う団塊ジュニア、「給料伸びぬ社員」比率増。

 年功序列の賃金体系が崩れ、今の日本企業では長年働く社員ほど賃金が伸びにくくなっている。転機を迎えているのは40代。バブル期に採用された多くの先輩に阻まれて出世が遅れ、賃金も上がらない。人口構成から「賃金が増えない社員」の比率が上がってきたことが、統計上の賃金が伸びない一因になっている。

空かないポスト
 「バブル世代が上に詰まっている。ポストが空かない」。都内のメガバンクに勤める男性がこうこぼす。1970年代前半に生まれた「団塊ジュニア」は今、40代半ば。かつては仕事に脂が乗るといわれた世代の多くが、今は「ずっとヒラ社員」の危機にある。

 大和総研によると、2016年に40代で部長に就いている人の割合は2・5%、課長は11・2%。この比率は00年代後半から低下が目立ち、10年前より部長が1・6ポイント、課長は2・6ポイント下がった。全体では部課長の割合は横ばいから微減で、40代が割を食っている。

 団塊ジュニアの40代は人数が多く、人件費に占める割合も大きい。「企業はボリュームゾーンの昇進を遅らせて、人件費の削減を図っている」(大和総研の小林俊介氏)。多くの企業は固定費に敏感で、人件費をかけてまでして部課長を増やす気はない。

 部課長になっても、給料が増え続けるとは限らない。16年時点で企業の7割は、課長以上の管理職に仕事の中身に応じて給料を決める「役割・職務給」を採用している。99年の2割から大きく上がった。かわりに減ったのが「年齢・勤続給」。仕事で成果を残せなければ、賃金は増えない。

 新卒の初任給は少しずつ増えてきた。企業は良い人材を採用するため、「入り口」を飾る。一方で転職を経験せず長く働く40代の社員は賃金が伸びにくい。結果として年齢順に賃金の水準を並べた「賃金カーブ」は傾きが緩やかになる。

バブルの後遺症
 第2次安倍政権が動き出した12年12月以降、世代別にみて就業者に占める比率が目立って上がったのは65歳以上と、賃金が伸びにくい45~54歳だ。初任給の伸びにあやかる若手世代の構成比は下がっている。

 賃金が伸びない40代。この世代が経験した90年代後半の就職活動は「氷河期」ともいわれ、厳しかった。

 そこでやむなく非正規社員になった人は職場内訓練(OJT)によるスキルアップの機会も失った。スキルが乏しく転職できない人たちが、企業の賃上げ意欲を下げるとの指摘もある。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の宮崎浩氏によると、足元では人手不足感の強い業種ほど賃上げ率が低い傾向にある。「人手が足りない業種に、スキルが乏しく転職しにくい労働者が集まっている。経営者が賃上げの必要を感じていない」(宮崎氏)。日本総合研究所の山田久氏は「賃金上昇を伴う転職が活発にならないと、人材が低収益の事業にとどまる」とみる。

 世の中で人手不足といわれても、すでに働く40代の賃上げにはつながらない。バブルの後遺症は、ここにもある。

日本経済新聞

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