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70歳雇用
70歳雇用
- 2019-01-12 (土)
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70歳雇用の条件 呉越同舟の政労使―賃金・働き方改革不可避。
「すべての人が元気に活躍し続けられるよう人生二毛作、三毛作を可能にする社会を実現する」。安倍晋三首相は昨年12月21日、首相官邸で開いた会議で経団連の中西宏明会長らに語りかけた。中西氏は「経験豊かな人たちを会社に取り込んでいく」と応じた。
3年改革第1弾
首相が自民党総裁選で打ち出した全世代型社会保障に向けた3年改革。継続雇用年齢の引き上げは第1弾だ。一律で義務付けられれば負担増になるとの経済界の不安は今、影を潜めた。
「ステップ・バイ・ステップ」。政府が進める検討作業の大原則だ。70歳まで雇用するにしても、地域でのボランティア活動や、グループ会社での再雇用など、就労確保の選択肢を幅広く認める案が浮上している。企業と従業員の個別事情に応じて手法を選べるなら負担は大きくならない、と受け止められている。
労使の代表が直接参加する未来投資会議が検討の場となり、労働組合側も表立った反発はしていない。
連合の神津里季生会長は「意欲ある高齢者が自らの意思で希望し、働き続けられることは歓迎」と語る。気にかけるのは生活保障や健康確保などの安全網だ。
70歳までの継続雇用を望んでも、提示された賃金や労働条件から選択できない人が出るとみる。高齢者の健康状態には個人差があり、労災防止策も欠かせない。神津氏は「産業分野ごとの議論が必要。一律に就労を強いるのはむしろ反対だ」と意見の反映を求める。
政府は夏に基本方針を定め、2020年の通常国会に法案を出す方針。成立を経て施行されるのは21年以降だ。自民党の小泉進次郎厚生労働部会長は「現実的なカレンダー」と話す。今夏の参院選などと重なる3年改革の前半は安全運転に徹する首相戦略でもある。
「負の作用」懸念
懸念もある。八代尚宏・昭和女子大学特命教授は「能力差の大きい高齢者を画一的に優遇すれば、若年層が雇用機会を奪われる」とみる。70歳雇用で新卒の採用が奪われたり、若年層の賃金が抑制されたりする「負の作用」への危惧だ。
経済協力開発機構(OECD)は昨年12月、日本は非正規社員で働く高齢者が多いとして定年制や賃金制度の見直しを提言した。70歳雇用が非正規社員の形で進んでいけば、正社員との格差が広がる可能性がある。
能力の高い高齢者がいても、年金の受給額と同じ賃金水準で安く使おうとするなら働く選択肢はとらない。逆に、能力が低いのに高賃金が維持されれば若い世代の働く意欲はそがれる。それは不幸な70歳雇用だ。
年齢と関係なく、能力と賃金が見合うようにする。働き方に柔軟性を持たせ、高齢者や女性が仕事を続けられるようにする。そんな雇用システムへの移行が70歳雇用の前提となる。
不当解雇の金銭解決制度など労働市場の活性化を狙った改革は労使対立で進まなかった。景気に陰りが出てきたら企業はシニア雇用を整える余裕を失う。経済が安定している今なら賃金や働き方の改革論議を深められる。労使を抱き込んだ政治の役割はそこにある。
日本経済新聞
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